社内マニュアルをAIで作る手順 ── Codex / Claude Codeで属人化を解消【2026】
社内マニュアルは「ゼロから書く」から「AIに聞き取らせる」へ
「あの手続き、〇〇さんしか分からない」。この属人化を解消したいのに、マニュアル作成が後回しになる。理由はほぼ一つで、ゼロから書くのが重いからです。
2026年は、この前提が変わりました。ベテランに手順を口頭で説明してもらい、それをAIに整形させれば、下書きは数十分で立ち上がります。書く作業ではなく、聞き取って整える作業に変わったのです。
この記事は「全体の流れ → やり方 → 更新を止めないコツ」を最短で押さえます。使う道具は Codex(OpenAIのコーディング支援AIエージェント)と Claude Code(Anthropicのターミナルで動くコーディングエージェント)を基本にします。どちらも「フォルダ内の資料を読んで、文書を作る」役として使えます。
全体の流れ:マニュアル化の5ステップ
社内マニュアル作りは「集める→聞き取る→整える→直す→置く」の5ステップ。AIが担うのは3番目の整形だけで、残りは人の作業です。
まず全体像です。社内マニュアル作りは、次の5ステップに分解できます。
| # | 工程 | 内容 | 担当 |
|---|---|---|---|
| 1 | 集める | 既存の断片(メモ・チャット・録音の文字起こし)を1フォルダに集める | 人 |
| 2 | 聞き取る | 足りない手順をベテランに口頭で説明してもらう | 人 |
| 3 | 整える | 集めた素材をAIに渡し、手順書の形に整形させる | AI |
| 4 | 直す | 事実誤り・抜けを担当者が赤入れする | 人 |
| 5 | 置く | 全員が見る場所(共有フォルダ・社内Wiki)に置く | 人 |
ポイントは、ステップ3を人が手で書かないこと。素材さえ集めれば、章立て・手順の番号付け・用語の統一はAIが一気にやります。人の仕事は「素材を渡す」と「間違いを直す」に集中します。
AIに任せる範囲・人が残す範囲
「整形・章立て・言い換え」はAIが得意です。一方、④の事実確認(本当にこの手順で正しいか)は必ず人が残します。AIは”それらしい手順”を作れてしまうため、現場を知る人の赤入れが品質の生命線です。
どのAIを使うか:チャットとエージェントの使い分け
素材が1つならブラウザのチャット型AIで十分。複数ファイルを横断してまとめるなら Codex / Claude Code が本命です。
AIには大きく2種類あり、素材の量で使い分けます。
| 素材の状態 | 向いている道具 | 理由 |
|---|---|---|
| 口頭説明の文字起こし1つだけ | チャット型AI(ブラウザ) | 貼り付けて指示するだけで足りる |
| 複数ファイルが1フォルダにある | Codex / Claude Code | フォルダごと読んで横断整理できる |
断片が複数ある中小企業のマニュアル化では、フォルダを丸ごと渡せる Codex / Claude Code が本命です。「このフォルダの資料を読んで、新人向けの手順書を1本にまとめて」と指示すれば、散らばった情報を1つの文書に束ねてくれます。ここがブラウザのチャットにはできない部分です。
Codex / Claude Code の導入や基本操作は、Claude Codeの始め方にまとめています。まだ触ったことがなければ、そちらから読むとスムーズです。
マニュアル化の手順(Codex / Claude Code)
手順は5つです。コードは読めなくて構いません。AIに何を渡し、何を指示するかだけ押さえれば動きます。
- フォルダを用意する …
manual-source/のようなフォルダを作り、素材を全部入れる。 - 口頭説明を文字にする … ベテランの説明を録音し、文字起こしをフォルダに入れる(AI文字起こしのやり方参照)。
- AIに整形させる … 「このフォルダを読んで手順書を作って」と指示する(下のプロンプト例)。
- 担当者が赤入れする … 生成物を現場の人が読み、誤り・抜けを直す。
- 共有場所に置く … 全員がアクセスできる場所へ。次回は素材を足して再生成する。
プロンプト例1:素材から手順書を作らせる
最初に、次のように依頼します。読み手と粒度を指定するのが精度のコツです。
manual-source フォルダ内の資料をすべて読み、
「入社1年目の社員が、一人で作業を完了できる」レベルの手順書を作ってください。
出力の形式:
- 見出しは「準備するもの」「手順(番号付き)」「よくあるつまずき」の3部構成
- 手順は1ステップ1文、短い動詞から始める
- 専門用語は初出でカッコ内に一言説明を添える
- 資料に書かれていない箇所は勝手に補わず「要確認」と明記する
最後の「書かれていない箇所は補わず要確認」が重要です。これを入れないと、AIは空白を嫌って”ありそうな手順”を作文してしまいます。指示文の精度を上げる考え方はプロンプトエンジニアリング実践ガイドにまとめています。
プロンプト例2:新人がつまずく所を洗い出させる
叩き台ができたら、視点を変えてもう一度かけます。
今作った手順書を、初めてこの作業をする新人の視点で読み直してください。
「言葉が足りず迷いそうな箇所」「前提知識がないと分からない箇所」を
箇条書きで指摘し、それぞれ改善案を添えてください。
自分で書いた文章の穴は本人には見えにくいものですが、AIに別視点で読ませると抜けが浮かびます。これは人が書いた既存マニュアルの点検にも同じように使えます。
録音→文字起こし→整形をひと続きに
ベテランに「新人に教えるつもりで、作業しながら口で説明してください」と頼んで録音するのが、素材集めの近道です。文字起こしをそのままフォルダに入れれば、ステップ2と3がつながります。まとまった議事録や録音の要約手順は長文をAIで要約する手順も参考になります。
更新を止めないコツと注意点
マニュアルは「素材フォルダを正」にして、変更のたびに再生成するのがコツ。清書だけ手直しすると二重管理になって必ず古くなります。
マニュアルは作ることより、古くならないように保つことが難しい。ここが一番の勘所です。
- 素材フォルダを”正”にする … 手順が変わったら、まずフォルダの素材を直し、AIに再生成させる。清書だけ直すと元素材とズレて二重管理になります。
- 一度に完璧を狙わない … まず7割の叩き台を出し、現場で使いながら赤入れする方が結局速いです。
- 担当と更新日を明記 … 「最終更新:2026年7月/担当:総務」を先頭に。誰も更新しないマニュアルは半年で死にます。
注意点も押さえておきます。
そのまま公開しない・機密の扱いに注意
AIの生成物は必ず人が事実確認してから配布します。手順の正誤はAIには判断できません。また、顧客情報・個人情報・社外秘を含む素材を外部のAIサービスに渡す際は、自社の情報管理ルールと利用するサービスの規約を必ず確認してください。判断に迷う情報は入れない、が安全側の原則です。
AIを社内に広げる前段の整理は生成AIをはじめて仕事に使う人へも合わせてどうぞ。
よくある質問(FAQ)
Q. AIに任せると、マニュアルの中身が薄くなりませんか? A. 素材が薄ければ薄くなります。逆に言えば、ベテランの口頭説明という濃い素材を渡せば中身は濃くなります。AIは素材以上のものは作れないので、聞き取りの質がすべてです。
Q. コードが読めなくても Codex / Claude Code は使えますか? A. 使えます。文書整形の用途ではコードを書く場面はほぼなく、日本語で指示するだけです。導入だけ最初のハードルなので、Claude Codeの始め方を見ながら一度だけ設定すれば十分です。
Q. Word や PDF の既存マニュアルも読み込めますか? A. テキストを抽出できる形式なら読めます。うまく読めない場合は、いったんテキストやMarkdown(見出しや箇条書きを記号で表す軽量な書式)にして渡すと安定します。
Q. どのくらい時間が短縮できますか? A. ゼロから書くと数時間かかる手順書でも、素材が揃っていれば叩き台は数十分で立ち上がります。ただし人による事実確認の時間は別途必要です。ここは削れません。
Q. 情報が古くなったらどうすればいいですか? A. 素材フォルダを直してから、同じプロンプトで再生成します。清書側だけを手で直すと元素材とズレるので、常に「素材を直す→作り直す」の順番を守ります。
Q. チャット型AI(ブラウザ)ではダメですか? A. 素材が1つなら十分です。複数ファイルを横断してまとめたいときに Codex / Claude Code の強みが出ます。素材の数で選んでください。
マニュアル作成は「重い一大プロジェクト」から「素材を集めてAIに渡す小さな作業」に変わりました。まずは属人化が一番きつい業務を1つ選び、ベテランの説明を録音するところから始めてみてください。